特殊な胃腸病
膠原病は多臓器が障害される全身自己免疫性疾患です。膠原病における胃腸病変には膠原病自体によるもの(結合織の異常による運動機能異常や血管病変に基づく潰瘍性病変や出血、穿孔、梗塞など)投与薬剤による副作用。悪性腫瘍や他の自己免疫疾患の合併などがあります。
口腔病変
口腔潰瘍
SLE(全身性エリトマトーデス)などの活動期に見られ、原疾患の治療が基本です。
消化管の亜鉛の吸収障害により亜鉛不足から口腔内の潰瘍はおきやすくなりますので、亜鉛の摂取にて改善傾向がみられることがあります。
その他、二次感染の予防の為、うがいや虫歯の治療を行ないます。また局所的な口腔内ステロイド薬を用います。
口腔内乾燥
シェーグレン症候群の唾液腺障害のため生ずる。
原疾患の治療が基本となるが、人工唾液(サリベート)などを対症的に使用することもある。
その他
免疫抑制療法を受けている患者では、口腔内カンジダ(カビ)やウィルス性潰瘍ができることがあります。
食道病変
逆流性食道炎
PSS(強皮症)では平滑筋の異常に基づく、下部食道の拡張や蠕動の低下、食道内圧の低下から逆流性食道炎を合併します。
嚥下障害
PM/DM(多発性筋炎/皮膚筋炎)では横紋筋の障害による咽頭、喉頭筋や食道が障害され嚥下障害と食道の蠕動異常が生じます。
その他
ステロイド薬投与中の患者では、食道カンジダ症(カビ)を合併することがあります。
胃病変
胃・十二指腸潰瘍
膠原病の血管炎に基づきステロイド剤や非ステロイド性抗炎症薬の副作用による消化性潰瘍(胃・十二指腸潰瘍)です。
アミロイドーシス
RA(慢性関節リウマチ)ではアミロイド‐シスの合併により胃潰瘍やびらん、消化管機能障害が生じます。
悪性腫瘍の合併
PM/DM(多発性筋炎/皮膚筋炎)では30~50%に胃癌を合併します。
その他
PSS(強皮症)では胃蠕動低下によるもたれ感や吐き気を伴うことがあります。
小腸疾患
吸収不良症候群
PSS(強皮症)では小腸の拡張、蠕動低下がみられ、そのうちの10~30%に吸収不良症候群を起こします。蠕動低下が進むと腸閉塞症状がでます。
蛋白漏出性腸炎
SLE(全身性エリトマトーデス)やシェ‐グレン症候群ではリンパ管の拡張や血管炎の関与から蛋白漏出性腸炎を合併することがあります。
大腸疾患
PSS(強皮症)
PSS(強皮症)では大腸の拡張と憩室の合併から便秘や腹痛を訴えることがあります。また直腸肛門内圧低下から便失禁を起こすこともあります。SLE(全身性エリトマトーデス)では潰瘍性大腸炎やクローン病の合併も見られます。